ドタバタと、掲げられたプレートには不似合いな、荒々しい足音が立つ。

「失礼しましたっ!」

だらしなく着崩した制服に、カラフルな頭。ジャラジャラと身に付けたアクセが音を立て、四人の生徒が顔色を青くさせ廊下を全力疾走する。

「バッカ、ありゃヤベーよ!」

「誰だよ新任の美人保健医見に行こうなんて言ったの!そりゃ確かに美人だったけど…!」

「…俺達の手には負えない」

「あぁ…、堂島の言う通り。好奇心は猫をも殺す…って、あれ?アイツは?」

くるりと一人が背後を振り向く。
しかし、そこには誰もいない。

先を走っていた三人はゆっくりと足を止め、同じように背後を振り返った。

そして、徐に両手を持ち上げ合掌。

「すまん」

「俺達を恨まず成仏しろよ」

「……生きて帰れ」

それに倣って一番始めに五人目の不在に気付いた生徒も胸の前で手を合わせた。

「お前のことは忘れない」

遠ざかった保健室という名の恐怖の入り口に、四人はそれぞれ遠い目を向け、尊い犠牲に心の中で涙を流した。

「で、これからどうする?」

「う〜ん、この時間だと屋上には戻れねぇからなぁ」

「あぁ…柚木ちゃんが来てるのか」

「………あ」

どうしたと、視線を集めた生徒の視線の先には。

「この騒ぎ。また、テメェらか…」

眼光鋭く四人を睨み付ける一人の教師が居た。





[ 34 ]

[*prev] [next#]
[top]



- ナノ -